空間の除菌って効果的なの?


空間除菌や空気中の除菌を謳う商品の効果は?

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた昨年に、空間を除菌すると題して多数の商品が販売されました。中には使用条件とは異なる環境で実験を行うなど、効果を裏付ける合理的な根拠は認められかった商品が空間中の新型コロナウイルスを不活化できると評して販売されていたり、次亜塩素酸水の空間噴霧を学校などで行われたりと問題になりました。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」としており、また、「路上や市場と言った屋外においてもCOVID-19やその他の病原体を殺菌するために空間噴霧や燻蒸することは推奨せず」「屋外であっても、人の健康に有害となり得る」としています。また、「消毒剤を(トンネル内、小部屋、個室などで)人体に対して空間噴霧することはいかなる状況であっても推奨されない」としています。

また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、医療施設における消毒・滅菌に関するガイドラインの中で、「消毒剤の(空間)噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」としています。

これらの国際的な知見に基づき、厚生労働省では、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしていません。
これまで、消毒剤の有効かつ安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行われた例はありません。また、現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品もありません。


ウイルスは空気中や物の表面にもいるの?

実際に環境中のウイルスはどれくらいの時間生存していられるのでしょうか。

アメリカ国立アレルギー・感染症研究所が発表した研究データによると、空気中にエアロゾル状態でただよったウイルスは3時間で死滅します。一方、物の表面に付着したウイルスは、紙では3時間、銅(コイン)では4~8時間、段ボールでは1日、木や布では2日、ガラスや紙幣では4日、プラスチックやステンレスでは7日経過までに死滅します。

この事から、ある空間内のウイルスを除菌するのは空気自体の除菌と物質に付着したウイルスの除菌、両方が必要になります。


家庭内や医療機関内に持ち込まれたウイルスを不活性化する方法

それでは実際に家庭内や医療機関に持ち込まれたウイルスに対してどのような対策をとればよいのでしょうか。

空気中のウイルス対策

換気

なんといっても大切なのは換気です。新型コロナウイルス等の微粒子を室外に排出するためには、こまめに換気を行い、部屋の空気を入れ換えることが必要です。室内温度が大きく上がらない又は下がらないよう注意しながら、定期的な換気を行いましょう。適切な換気方法として、「窓の開放による方法」と「機械換気(空気調和設備、機械換気設備)を使用する方法」があります。

窓の開放 ○ 1時間に2回以上換気を行う(30分に1回以上、数分間程度、窓を全開にする)○ 風の流れができるよう開放する窓は2方向とし、窓が1方向しかない場合には、ドアを開ける
機械換気 ○ 1人当たり毎時30m3の換気量を確保すること ○ 必要換気量が足りない場合は、一部屋当たりの在室人数を減らすこと

なお、人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません。従って下記の項目については推奨するだけの根拠がまだない、という前提で情報のみ掲載します。

オゾンによる除菌

Amadanaグループは公立大学法人奈良県立医科大学微生物感染症学及び一般社団法人MBTコンソーシアムとの共同研究により、amadanaグループとHBコーポレーションが共同で開発したコア技術「High-Per OG」を搭載した電気分解式オゾン水除菌消臭スプレーで生成したオゾン水を用いて、新型コロナウイルスの不活化効果を実証しました。この研究では、オゾン水を実際の使用環境により近い条件で新型コロナウイルスに対して噴霧し、ウイルスに対して不活化効果が実証されていると発表しています。

一定の条件下で有効性が認められていますが、オゾンは高濃度だと人体に有害であることがわかっているので実際の使用には注意が必要です。

イオンによる除菌

シャープは、感染症研究の世界的権威である長崎大学と共同でプラズマクラスター技術搭載ウイルス試験装置を作成し、空気中に浮遊する「新型コロナウイルス」にプラズマクラスターイオンを約30秒照射することにより、感染価が90%以上減少することを世界で初めて実証しています。

この実験結果は現段階で実際に現場で推奨とはなりませんが、有害性については特に報告はないようです。今後の報告が待たれます。

次亜塩素酸水噴霧による除菌

「次亜塩素酸水」の空間噴霧で、付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは、メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが、国際的に評価方法は確立されていません。
安全面については、メーカーにおいて一定の動物実験などが行われているようです。ただ、消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸いこむことは、推奨できません。空間噴霧は無人の時間帯に行うなど、人が吸入しないような注意が必要です。

なお、ウイルスを無毒化することを効能・効果として明示とする場合、医薬品・医薬部外品の承認が必要です。現時点で、「空間噴霧用の消毒薬」として承認が得られた次亜塩素酸水はありません。次亜塩素酸水のミストが人の目に入ったり、皮膚に付着したり、吸入されたりするおそれのある状況で空間噴霧することはおすすめできません。

また、次亜塩素水とは別の物質ですが、よく似ている名前の塩素系漂白剤を希釈した「次亜塩素酸ナトリウム」を人がいる空間への噴霧することは、眼や皮膚に付着したり吸入したりすると危険であり、噴霧した空間を浮遊する全てのウイルスの感染力を滅失させる保証もないことから、絶対に行わないでください。

手や指などのウイルス対策

流水による手洗いが最も重要です。流水による15秒の手洗いだけで1/100に、石鹸やハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます。また、手洗いがすぐにできない場合は、アルコール(濃度75%~95%のエタノール)消毒液も有効です。

モノに付着したウイルス対策

熱水

食器や箸などには、熱水でウイルスを死滅させることができます。
[使用方法]80℃の熱水に10分間さらします。/100に、石鹸やハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます。また、手洗いがすぐにできない場合は、アルコール(濃度75%~95%のエタノール)消毒液も有効です。

塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)

テーブル、ドアノブなどには、市販の塩素系漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」が有効です。
[使用方法]市販の家庭用漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.05%になるように薄めて拭きます。その後、水拭きしましょう。
[注意事項]
・目に入ったり、皮膚についたりしないよう注意してください。
・飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意してください。
・酸性のものと混ぜると塩素ガスが発生して危険です。
・「次亜塩素酸水」とは違います。「次亜塩素酸ナトリウム」を水で薄めただけでは、「次亜塩素酸水」にはなりません(※1)。
・金属製のものに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると、腐食する可能性があるので注意してください。

※1「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」は、名前が似ていますが、異なる物質です。「次亜塩素酸ナトリウム」は、アルカリ性で、酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができるようになっています。ハイターなどの塩素系漂白剤が代表例です。「次亜塩素酸水」は、酸性で、「次亜塩素酸ナトリウム」と比べて不安定であり、短時間で酸化させる効果がある反面、保存状態次第では時間と共に急速に効果が無くなります。

洗剤(界面活性剤)

テーブル、ドアノブなどには、市販の家庭用洗剤の主成分である「界面活性剤」も一部有効です。界面活性剤は、ウイルスの「膜」を壊すことで無毒化するものです。9種類の界面活性剤が新型コロナウイルスに有効であることが確認されています。
[使用方法]有効な界面活性剤が含まれた家庭用洗剤を選びます。
・家具用洗剤の場合、製品記載の使用方法に従ってそのまま使用します。
・台所用洗剤の場合、薄めて使用します。

次亜塩素酸水

テーブル、ドアノブなどには、一部の「次亜塩素酸水」も有効です。電気分解などの手法で作られる酸性の物質で、食品の消毒などに使われていますが、「次亜塩素酸ナトリウム」とは別のものとなります。一定濃度の「次亜塩素酸水」が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが確認されています。

なお、「次亜塩素酸水」については、一般的な消毒用アルコール類(エタノールなど)と使用方法や注意事項が異なりますので、使用方法についてはこちらをご確認ください。


まとめ

はっきり言えることは、現時点でエビデンスに基づいた空間噴霧によるウイルスの不活化について有効かつ無害な方法はなく、認められていないということです。その事実にもとづいて正しい知識を身につけましょう。また今後の新たな知見についても随時アップデートしていきましょう。


参考文献
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf

奈良県立医科大学との共同研究による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化を実証|amadanaのプレスリリース (prtimes.jp)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000011936.html

世界初、プラズマクラスター技術で、空気中に浮遊する 「新型コロナウイルス」の減少効果を実証|ニュースリリース:シャープ (jp.sharp)
https://corporate.jp.sharp/news/200907-a.html
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