感染症って?
仕組みと正しい予防法を理解しましょう

感染症とはどんなものか、どのような感染対策が正しいのか。
不正確な情報で過度な不安に踊らされることなく、正しい感染症対策の知識を身につけましょう。


感染症とは?

感染症とは、病原体とよばれる病気を起こす小さな生物が体内に侵入して、症状が出る病気のことをいいます。病原体は大きさや構造によって細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などに分類されます。

また、感染が発生するためには病原体が人や動物に伝播するための感染経路や、病原体に対するレセプターが存在する宿主が必要です。実際に病原体が体に侵入しても、症状が現れる場合と現れない場合とがあり、感染症となるかどうかは、病原体の感染力と体の抵抗力(免疫力)とのバランスで決まります。


感染経路 — 感染のメカニズム

感染経路とは、病原体が体の中に侵入し、感染がどのような経路で起こるかを示したものです。病原体が体の中に侵入する経路には、母子感染といわれる垂直感染と、ウイルスや細菌が主に口や喉、鼻などを経由して感染する水平感染の2種類があります。

垂直感染は妊娠中、あるいは出産の際に胎盤や産道を通じて病原体が赤ちゃんに感染することをいい、一般的に“母子感染”といわれています。 風疹やトキソプラズマ、B型肝炎などがその例です。

水平感染は感染源(人や物)から周囲に広がるもので、おもに、接触感染、飛沫感染、空気感染、媒介感染の大きく4つに分類されます。また、感染が直接か間接かによっても分類することができます。

直接感染に分類される飛沫感染(くしゃみ/咳による感染)と間接感染に分類される空気感染の違いは、飛沫感染は感染源が近くに存在していることが必要条件なのに対して、空気感染は換気システムなどを通じて、ある部屋から別の部屋へ感染が広がっていくという違いがあります。

接触感染 感染者あるいは感染源と直接接触し感染する
飛沫感染 くしゃみや咳などウイルスや菌を含む飛沫を吸い込んだり、鼻や目などの粘膜に付着し感染する
空気感染 空気中を漂う微細な粒子(飛沫核)を吸い込むことにより感染する
媒介感染 汚染された水、食品、血液、動物、昆虫を介して感染する

尚、新型コロナウイルスは、飛沫感染、接触感染(ウイルスが付着したものの表面を触ることにより、口腔、鼻腔粘膜、眼から感染すること)が疑われています。


感染対策の原則は、感染成立の3要因への対策と、病原体を持ち込まない、持ち出さない、拡げないが基本です。

感染成立の3要因と感染対策

感染症は ①病原体(感染源)②感染経路 ③宿主 の3つの要因が揃うことで感染します。感染対策においては、これらの要因のうちひとつでも取り除くことが重要です。

特に、「感染経路の遮断」は感染拡大防止のためにも重要な対策となります。また病原体(感染源)の排除と宿主の抵抗力の向上も感染対策になります。

医療現場における感染症対策とは

次に、医療・ケアを提供するすべての場所で適用される感染予防策である標準予防策(standard precautions)について説明します。

感染源の有無に関わらずすべての血液、体液、分泌物(痰など)、嘔吐物、排泄物、皮膚の創傷、粘膜などは、潜在的な感染源であり、潜在的な感染力を持つものとして扱われるべきであるという考え方です。

感染源となるもの

感染症の原因となる微生物(細菌、ウイルス等)を含んでいるものを感染源といい、次のものは感染源となる可能性があります。
・嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
・血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
・使用した器具・器材(注射針、ガーゼ等)
・上記に触れた手指等

標準予防策の具体例

・血液、体液、排泄物等に触れるときには手袋の着用※を行う
・感染性廃棄物を 取り扱うときにも手袋の着用※を行う。
・血液、体液、排泄物等が飛び散る可能性があるときは手袋・マスク・エプロン・ ゴーグルの着用※を行う。
・針刺しの防止・リキャップの禁止を徹底し、針捨てボックスに直接廃棄する。
・汚染されたリネン類は適切に回収・搬送され、適切に処置する。
※手袋等を外した時は必ず手指消毒を忘れずに行いましょう!


ワクチンによる感染症の予防

感染症の中にはワクチンで予防できるものもたくさんあります。ワクチンとは病原体、あるいは細菌が出す毒素の病原性を弱めたりなくしたものです。ワクチンを接種すると、病原体に対する免疫ができ、病原体が体に侵入しても病気にならない、あるいは病気になっても症状が軽くて済むようになります。

そのため、感染予防、発病予防、重症化予防、感染症の蔓延予防などを目的とし、様々な感染症についてワクチンの予防接種が行われています。

例えば、ワクチンで予防できる感染症には、インフルエンザ菌、破傷風、おたふく風邪、百日咳などがあります。インフルエンザワクチンなど大人も対象となるワクチンもありますが、多くのワクチンは小児用定期接種プログラムの対象となっています。これは、子どもたちに安全で効果的なワクチンを接種し、社会全体で子どもたちを守っていくためのものです。

一部、予防接種が公的に実施されていなかった期間もあるため、ご自身の接種歴をもう一度確認してみましょう。

新型コロナワクチンの効果について

新型コロナワクチンは現在国内で接種が進んでいるファイザーとモデルナいずれのワクチンも、臨床試験では90%以上の発症予防効果が確認されています。重症化予防効果については、実施された臨床試験や、承認後に実際に接種された人の情報を集めた研究等から、重症化予防効果を示す結果が報告されており、効果が期待されています。

新型コロナウイルス感染症の発症と重症化を低下させるというデータはありますが、感染や発症を100%防げるものではありません。ですから、引き続き日頃の感染症対策を継続していきましょう。

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